子会社の監査役 ④科目別・取引先別にみていく

監査・内部統制

『確認すべき科目メモ』について確認していきます。
*「②重要ポイントを絞り込む」・「③まずは読むべき4つの資料」参照

どのレベルまで調べる必要があるか、決めてください。
⇒会社の担当者へのインタビューで内容確認(終了)
⇒自分で資料を確認(次へ進む)

科目別・取引先別の明細(BS・PL)を入手してください。
『確認すべき科目メモ』を中心に、すべて目を通して気になるものを調べてください。
参考までに、営業債権債務、貸付金・借入金、有価証券と差入保証金について注意点をあげておきます。
『発展⇒』は気になった場合のみ実施してください。

営業債権

妙に増えている取引先で、事業の状況と整合していない場合は、実態のある取引か確認しましょう。架空計上ではないことを確認してください。

昔、インドの出資検討先の財務諸表を分析してコメントしたことがあります。売上、利益が年々すごく伸びていて成長企業風なんですが、営業債権が不自然に膨らんでいました。その他もろもろ気になる点がてんこ盛りだったので、辛辣なコメントにしましたが、その効果があったのかどうか、結局、出資しませんでした。今でも、あれは高値掴みさせるためのお化粧だったと思っています。

また、大口だけど聞いたことのない取引先は回収に懸念がないか確認し、滞留債権は別途資料を入手し確認します。

(投資)有価証券

流動と固定が適切か確認してください。
取引先等の業務上取得した有価証券のほかに、余剰資金の運用として取得した有価証券があった場合、元本割れのリスクがあるか確認します。元本割れのリスクのある有価証券について企業グループの方針があれば、方針の枠内であることを確認してください。子会社の取締役会等で適切な手順を踏んでいても、企業グループの方針から逸脱があれば指摘します。
企業グループの方針が曖昧でだめともいえないものの、元本割れのリスクが看過できないと判断した場合、一歩踏み込んで、親会社に企業グループの方針を出させるか、自分の判断で監査役として指摘しましょう。

昔、保険の顔をした節税商品(注)がありました。
・掛け金(元本)が丸々戻ってくる
・取引先が倒産した場合に貸付が受けられる
仕組みです。

ある子会社で税理士に勧められ、企業グループの方針で元本割れの可能性がある運用はだめでしたが元本割れのリスクはない(さらにこれは保険であって運用ではない)ということで子会社の取締役会で購入を決議していました。

税理士のセールストークでは、メリットは節税で、掛け金拠出時は損金、満期返戻金は益金となり、納税を繰り延べる効果のほか、当時は法人税を順次引き下げていたころなので、損金時より益金時の税率が下がれば差額で儲けられる、というものでした。

私は、以下の理由で反対して止めさせました。

・取引先が倒産しても親会社から支援するので資金繰りの心配は不要で、保険を掛ける必要はない。実質的に節税を目的とした余剰資金の運用である。

・法人税が下がることが強く予想されるものの、企業に厳しく個人に甘い野党が政権を取って、法人税増税、消費税減税となる可能性も否定できない。その場合は、形式的には元本リスクはないが、税金費用を含めて実質的に考えると元本を毀損することになる。

購入していた場合、会計上は有価証券ではないものの資産扱いのような気がしますがどうでしょうか?
注:2019年国税庁の通達改正で保険商品の扱いは変更されています。

貸付金

グループ会社以外への貸付は注意してください。特に個人は要注意です。

発展 ⇒ 役員・従業員への貸付は、別途明細と社内融資に係る規則を入手してください。特に高額なものや、返済スピードがおかしいものは規則に沿った融資になっているかチェックしましょう。

たまに、横領した従業員の返済分を貸付金にしていることがあります(この場合は社内融資規則と異なる融資条件になっていると思います)。ちゃんと親会社に報告していればいいですがこっそり処理していることも多い(?)ので、未報告の案件を見つけたらちゃんと報告させましょう。

差入保証金

差入保証金の対象となっている取引を確認します。必要性がなくなった差入保証金はすぐに返還してもらいましょう。不動産関係であれば漏れはないでしょうが、営業上の保証金があれば取引状況を確認しましょう(不動産の退去のようにはっきりとした終了がない取引の場合、なんとなく残っている可能性があります)。

発展⇒差入保証金は先方の領収書を確認します。不正リスクを感じたら、先方に残高確認状を出しましょう。

営業債務(営業費用)

聞いたことのない取引先(いっぱいあるようなら金額で絞ってもいいかもしれません)は実態のある取引か確認します(不正リスク)。

借入金

金融機関以外は注意してください。特に個人は要注意です。

調べ方

取引であれば証憑や契約書、貸倒引当金などは明細資料という感じで調べてください。

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