監査役と税理士
子会社の経理をよく知っているのは誰でしょうか?
経理担当者ですね!
税理士も忘れてはいけません。
監査役になると、子会社の取締役と経理担当者とはコミュニケーションを取ると思いますが、税理士とはどうでしょうか?
税理士は会社の経理をよく知る重要な情報源なので、私は、子会社の監査役になったらすぐに自分から子会社の経理の人に税理士との面談を依頼しています。
しかし、「会計監査人非設置会社の監査役の会計監査マニュアル(日本監査役協会)」では、監査役は税理士にインタビューすべきとは書いていません。
監査役監査と会計監査人監査に内部監査を加えて、三様監査といい、連携すべきとされています。これに対し、税理士は決算に続いて申告書を作成するだけ(社内で申告書を作成する場合は相談を受けるだけ)で、『監査』と違い、会社に『物申す』ことはしません。
監査役のあるべき監査の話の中で、税理士とのコミュニケーションが取り上げられることはあまりないと思いますが、連携すべき三様監査とは意味が違うものの、税理士をスルーするのは大事な実質が欠けているのでは?と思います。
税理士は知っている!会社の経理をよく知る専門家
法人税申告書は大事な情報ですが、加減算の判断をしている税理士自体も大事な情報源になります。さらに、記帳代行など一部経理業務を任せているならなおさらです。
税理士インタビューで聞くべきこと
子会社の人に面談を設定してもらうと、子会社の人も同席することになると思いますが、なるべく率直に発言しやすいよう可能な限り人数を絞りましょう。会う機会を意識的に作り、気軽にコミュニケーションできるようになれば、問題がある場合、言葉の端々からヒントが得られると思います。
事前に申告書と過去の税務調査の子会社からの報告書に目を通し、質問内容を考えてください。一般的には、以下の内容を確認するといいと思います。
【質問】〇〇(申告書で気になった点)について内容を教えてください。
【質問】前回の税務調査ではどういった指摘がありましたか?
また、その後の対応はどうなっていますか?
(税務調査の事実自体が報告されていない可能性もありますが、
口止めされていなければここで判明します)
【質問】非常によくやっていただいていると思いますが、
何かアドバイスするとしたら何でしょうか?
【質問】心配している点は何でしょうか?
税理士に聞く!税務調査の真実
税務調査ではさまざまな統制の不備が明らかになることがありますが、子会社が正直に親会社に報告するとは限りません。
例えば、役員・従業員の不正が明らかになった場合、税務署は再発防止策などは求めません。損金を否認して税金を増やして終わりです。親会社への報告は、経営者本人の不正でなくとも、面倒なので曖昧にして終わりにし、不正が継続することもあります。税務調査をよく知る立場の税理士が、クライアントである子会社を飛び越えて親会社に報告することは当然ありません。
税務調査で発覚した不正などは、子会社の経営者や税理士が結束して隠蔽しているならともかく、税理士へインタビューしていけば、なんとなくわかる可能性があります。
税務調査では、不正などの大事でなくても、さまざまな統制や処理の不備が明らかになりますので、ぜひ、税理士に直接インタビューしましょう。税理士は子会社の親会社への報告書など頭に入っていませんので、報告書にない情報が入手できるかもしれません。
また、税務調査があれば積極的に立ち会いましょう。
税理士を巻き込んだ不正はかなりやっかいです。
子会社の代表の横領が税務調査で発覚したものの、親会社に報告されなかった事例がありました。後ほどバレましたが、そのパターンでは、横領していた代表個人の横領と返金についての所得税についても子会社の税理士が面倒をみていた様子なので、ほぼグルだと思いましたが、グルである直接的な証拠はないので税理士については特に追及もなく終わっています。
そもそも税理士がいない場合、税理士に任せるよう指導した方がいいのか?
少し視点を変えます。
子会社の経理の人が申告書を作成している場合、税理士に任せるように指導すべきでしょうか?
様々な状況があるので一概にはいえませんが、規模が大きく、経理人員が十分であれば、税理士に頼むとしても相談程度で、自社人員で申告書を作成できる方がいいと思います。
規模が大きいなら社内に税務人材がいた方が総合的にはプラスになると思います。
しかし、管理系の業務は総務が何でも屋になっている規模であれば、税理士に任せた方が税務リスクを抑えることになるし、効率的です。規模が小さいのに、支出をケチって担当者がよくわからないまま申告している状況であれば税理士に任せるよう指導しましょう。
十分な知識と時間のない社員に任せると税務リスクが高くなり、また、ほかの業務ができなくなるので、総合的にみればコストを抑えることにもなるはずです。
税理士に頼む利点(経理人材の薄い規模の小さい子会社の場合)
・社内の人材を他の業務に有効利用できる
・決算書・申告書の信頼度が高まる
・税務調査への対応の信頼度が高い
・政策減税への対応ができる(毎年変わる仕組みの理解や提出資料作成は難しい)
・他の専門家とつながることができる