子会社の監査役【固定資産】9月決算の減価償却月数

監査・内部統制

月末日に取得・稼働

自分の会社は3月決算ですが、9月決算の子会社もあります。
その子会社では固定資産があまりなく、普段は注目されませんが、8月に割と大きな取得があったのに、8月月次決算報告で減価償却費を計上しておらず、親会社の経理側で『おかしいだろ!』と強く言う人がいて、ちょっと炎上しました。

よくよく調べてみると、8月31日に取得・稼働しており、その場合、9月決算の場合の償却月数は1か月なので、月次決算なら8月は計上しない対応でよかったようです。

暦法的計算法

事業年度の中途で事業の用に供した減価償却資産の償却限度額については、法人税法施行令第59条で定められています。

当該事業年度の償却限度額に相当する金額を当該事業年度の月数で除し、これにその事業の用に供した日から当該事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額
・・・月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

これを読むと、8月は31日の1日が端数なので1か月、9月は1か月、合計の2か月では?と思いますので、強く主張した方の気持ちもわかります。炎上はだめですけどね。冷静に話し合いましょう。
『暦に従って』というのが曲者です。
国税通則法第10条1項で期間の計算について定められています。

(期間の計算及び期限の特例)
第十条 国税に関する法律において日、月又は年をもつて定める期間の計算は、次に定めるところによる。
一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。
二 期間を定めるのに月又は年をもつてしたときは、暦に従う
三 前号の場合において、月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月にその応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

暦に従って期間を計算する方法を『暦法的計算法』といって、最小単位は日となります。
3月決算の場合、1月31日に稼働すると、3月30日(起算日に応当する日の前日)まで2か月、3月31日は端数として1か月、合計の3か月の償却となります。

問題の9月決算の場合ですが、8月31日に稼働すると、9月30日まで1か月となり、端数がない!ので1か月の償却となります。「事業の用に供した日が属する月」から「事業年度最終日の属する月」まで月数を数えるのではありません。あくまで最小単位は日になります。

3月決算や12月決算では、事業年度末日が31日なので、起算日がいつになっても必ず『端数』がでるため、「事業の用に供した日が属する月」から「事業年度最終日の属する月」まで月数を数えるのと同じ結果になりますが、9月決算のように事業年度末日が31日でない場合は、31日稼働に気を付けましょう!

≪参考≫初日(しょじつ)不算入の原則

国税通則法第10条1項で、一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。」とあります。
31日稼働で、初日不算入だから翌1日から計算する、となると、
3月決算の場合、2か月の償却となってしまいます。
1月31日に稼働⇒2月1日が起算日⇒3月31日(起算日に応当する日の前日)まで2か月(端数なし)
参考までに初日不算入についても説明したいと思います。

初日不算入とは、例えば、「○○を知った時から5年間」であれば○○を知った日を飛ばして翌日が起算日となります。「何日」ではなく「何時」から計算するのは実務的に困難なので、初日は全部算入するかしないかにするしかないわけですが、法律上期間の経過は当事者の不利益となる場合が多いので期間の満了が遅くなる不算入のほうを採用しています。
しかし、「事業の用に供した日から」のように「日」を起算とする場合は「午前零時から始まるとき」になり、初日不算入の但し書きに該当して、31日稼働は31日から計算します。

民法第140条でも同様の初日不算入の定めがあります。

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