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2020年10月から電子帳簿保存法が改正されました!
税制改正(2020年10月)により、データで受け取る証憑(電子取引)についてデータ保存の要件が緩和されました。
みなさんの会社では、データ保存の要件が緩和された10月から何か効率化・簡素化していることはありますか?
残念ながら、当社では何も変わっていません。10月の改正についてちょっと調べてみましたが、なかなか簡素化は難しそうなのでちゃんと確認する前に諦めました。迷ったことや疑問などつらつら書いていきます。
ということで、残念ながら、『これでバッチリ!経理DXはこうする!』みたいな内容ではありません。
電子帳簿保存法(電子取引)の改正内容
データの保存方法が2つ追加されました。
電子帳簿保存法施行規則第8条(1項の1号と3号が追加)
当社の経理システム
メインの経理システムは、自社製でファイル保存機能がありません。
その時点で論外ですが、申請権限と承認権限にはわけて設定できますが、システム上に承認フローがないので、紙に印刷しての『押印フロー』なのでさらにだめです。
メインではありませんが、当社では経費精算にクラウドシステムを利用しており、こちらではどうでしょうか?
経費精算のシステムではスキャナ保存等は何もやっておらず、タイムスタンプ機能は利用していません。すべて紙保存です。
このシステムでは、ファイル添付機能があり、締めた後は訂正削除はできません。
追加された保存方法(訂正削除の管理)に該当するように思いますが、確認はしていません。もし、該当する場合、どれほど簡素化できるのか、調べてみます。
経費精算システムがデータ保存要件を満たすと、どれだけ簡素化できるのか?
当社で利用している経費精算システムは、よく普及しているクラウドシステムです。
スキャナ保存機能もタイムスタンプ機能も使っていませんが、データ保存の3号要件(訂正削除の管理)を満たすとすると、どれだけ簡素化できるのでしょうか?
細かい取扱いが公表されていますのでみていきましょう。
電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和2年6月 国税庁
問3 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか?
⑴ 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
⑵ インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ
(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷
(いわ ゆるハードコピー)を利用
⑶ 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
⑷ クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、
スマート フォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
⑸ 特定の取引に係るEDIシステムを利用
⑹ ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
⑺ 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
【回答】 ⑴~⑺のいずれも「電子取引」(法2六)に該当すると考えられますので、所定の方法により取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデ ータが保存されていれば、出力した書面等を保存する必要はなく、また、別途書面の請求書等を授受する必要もありません。
メールやダウンロードによる請求書等PDFの受取り
Amazonなどは請求書払いにしていますが、サイトで各自が個人のクレジットカードで精算し、領収書をダウンロード・印刷して証憑として提出しているものもあり使えそうです。
しかし、一問一答・問3の留意点として、
イ ⑴⑵については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受領したデータに規則第8条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理することが必要です。
となっています。つまり、データの改竄ができるため、4号の「訂正及び削除ができないシステム」という要件が使えないということのようです。
従来通りの事務処理規程を作る必要があり、今回の税制改正で簡単になるわけではありません。わざわざ、事務処理規程の作成管理をするほどのメリットがあるのか、微妙です。
クレジットカードの利用明細データ
消費税では、カード利用について、「事業者からのご利用明細」は請求書等に該当しますが、「カード会社からの請求明細書」は請求書等には該当しないという扱いです。
国税庁 質疑応答事例 カード会社からの請求明細書
今は、クレジットカード会社とのデータ連携をしていませんが、データ連携できれば「カード会社からの請求明細書」はデータで入手できます。
「カード会社からの請求明細書」のデータが「クレジットカードの利用明細データ」のことだと思いますが、カード会社から「クレジットカードの利用明細データ」を受取り、データ保存すれば紙の領収書等は保存しなくてもよい?、ということなら利用できそうですが、国税庁の質疑応答事例での扱いはどうなるのでしょうか?
よくわかりません。
前提
法人税では、請求書・領収書は絶対必要なものではなく、取引内容が説明できればよいので、カード会社からの請求明細書で問題ありません。
一方、消費税では、領収書等は3万円未満は不要で、3万円以上は絶対必要とされています。今なら、3万円未満であれば、電子化された「カード会社からの請求明細書」を受け取れば「事業者からのご利用明細」は不要とできますが、2023年のインボイス制度からは3万円未満でも領収書等が必要となります。
近い将来のことなので、
・消費税では金額にかかわらず領収書等は絶対必要
という前提で考えているので、
・「カード会社からの請求明細書」は領収書等に該当しない
となるとどうなんだろう?ともやもやしています。
交通系ICカードによる支払データ
交通費の精算ではICカードを読み込んでいます。今のところ、交通費以外は読み込めない設定になっていますが、コンビニ支払などのデータも読み込めれば使えそうです。
顧客にコンビニコーヒーを出しているケースがあり、大量の領収書の貼付けが大変そうではありますが、設定や運用を変えるほどのメリットは感じません。
検討してみた結論
スキャナ保存やタイムスタンプ利用など、電子取引による証憑のペーパーレス化をまったく進めていなかった会社としては、今回の改正を検討してみた結果、メインの経理システムは論外で、経費精算だけでは用途が狭く、イマイチな感じです。
そもそも仕組みが紙の領収書に比べて厳格すぎる
しかし、なぜこんなに普及しない仕組みにするのでしょうか?
もともと、紙の領収書は簡単に偽造できます。
文房具屋でコクヨの領収書を買って、適当な会社名のハンコを作って押せば、金額が手書きでも保存義務としては問題ありません(社内的には、交際費の飲食店ならともかく、通常の取引ならもうちょっとかっちりした領収書でないと怪しまれるかもしれませんが)。
税務署は、怪しい取引の怪しい領収書だと思えば反面調査で調べるだけです。
スキャナ保存なら、「写真を撮ったらすぐ紙は捨てていい」でいいのではないでしょうか?
また、スキャナ保存や電子取引に対しタイムスタンプが必要、そんな厳格な取扱いは不要です。
紙の領収書で同じくらい厳格にすると、印鑑登録したハンコで押すこと、そして確認できるように印鑑証明書も添付すること、それくらいのレベルです。
紙の領収書は、取引の現場で負担にならないよう、何も保証のない状態で認めていて、何かあれば税務署は反面調査で確認するメカニズムです。
電子化しても同じレベルでいいはずで、これほど厳格化するのは電子化にやる気がないとしか思えません。
河野大臣がんばれ!