「たかが会計」読書メモ

企業価値の向上

読むきっかけ

社内でROEの説明資料を作るので、資本コストやらの本を読んでおこうというのがきっかけです。

ツイッターでチラホラ読んでいる人たちがいたのと、タイトルが刺激的なので、サクッと読めるヤツだな、と安心して読み始めました。

第1章 経済学の背後に会計あり

ヒックスからはじまるのかよ!

なんか、難しそう。サクッとしてないぞ。

第2章 フローがストックを決める

会計の利益からはウィンドフォールは除こうよ、という流れ。

「会計基準の研究」(斎藤静樹先生)の世界を歩くようだ。

資本コストの話で、無限等比級数が出てきます。

事前の資産価値、収入および資本コストの関係は、無限等比級数の和の公式から、
事前資産価値=事前期待収入÷事前資本コスト
であり、期待が変化した後すなわち事後の関係は、
事後資産価値=事後期待収入÷事後資本コスト
となるはずである。

無限等比級数の和の公式
\( \lim_{n \to \infty}S_n \)について、
\(|1|>r \) のとき、\(\frac{a}{1-r}\)に収束し、
\(|1|\leq r \) のとき、発散する

無限等比級数へどう当てはめるのか?なんかよくわかりません。
数値例をみると、期待収入100、資本コスト10%だと資産価値は1,000になる、ということなので、単に資本コストと期待収入が釣り合うところが資産価値になります。
資産価値1,000 x 資本コスト10% = 期待収入100

無限等比級数への当てはめは「?」ですが、特に支障がないのでスルーしました。

第4章 変動する資本コストと利益流列の重要性

資産負債を時価評価した全体の純資産の変動より、純損益の方が大切ですよ、とのこと。

2018年に改訂されたIASBの概念フレームワークでは、純損益の主要な役割が明確化されました。

中2病だったIFRSが大人になったようです。

後は包括利益を廃止してもらいたい!2期比較のBSに増減額を追記すれば事足りると思います。

第7章 企業の資本コストというまぼろし

企業の資本コストというのは、個別投資の資本コストがまずあって、その資産価値をウェイトとする加重平均

とあります。ある程度の規模の企業だと個別に認識される資本コストは4-5事業くらいでしょうか?(私の会社もそんな感じ)

資産入替え前の株主資本コスト(あるいはWACC)7%というハードルレートを基準に、資本コスト(期待リターン)3%の資産に入れ替えることは企業価値を低下させるという、ありがちな主張は誤りである。

確かに”ありがち”ですね(笑)
このように、「資本コストの異なる新規資産に入れ替える」だけでなく、既存事業の継続においても、ある程度の規模の企業であれば個別に資本コストが認識される事業は複数あるでしょうから、すべての事業で企業全体の資本コストをハードルレートに設定されたらおかしくなります。

資本コストにより設定されたハードルレートが適切な場合(事業部門別に適切に資本コストを設定している場合や、会社全体でみて1つの事業で1つの資本コストが適切な場合)は、通常、新規投資といっても、既存事業の枠内で行われるので、資本コストは変わらず、設定されたハードルレートは有効だと思います。なかなか、資本コストが異なるほどの「新規投資」はないのではないでしょうか?

既存事業で企業価値を増加させるには、
・期待CFを増加させる(資本コストはそのままでもOK)
・事業に係るリスクを減少させ資本コストを減少させる(期待CFはそのままでもOK)
となりますので、やはり、資本コストによるハードルレートは大事ですね。

第8章 地獄への道はハイリターン投資で敷き詰められている

リスクが同程度なのに期待リターンが企業の資本コストを相当程度上回るということは、市場均衡からの乖離を意味する・・・
企業に独自のノウハウがある場合、ビジネスに高い付加価値が生じることは否定しない。
しかし、企業のノウハウの成果は、極論すれば単にカネを出すしか能のない投資家ではなく、ノウハウを生み出した経営者・従業員に帰属するはずなので、投資家に帰属する資産価値つまり期待キャッシュフローには反映されないはずである。

資本コストを超過した利益は、
すべて経営者・従業員の賞与でOK!

それはうれしいぞ!となりますが、そうなのでしょうか?
欧米の経営者報酬が高額なのはそういうことが背景にあるのでしょうか?

株主資本コストと負債コストを加重平均したWACCが資産の資本コストによって先に決まった後、レバレッジの程度に応じて、リターンとリスクがそれぞれ株主と債権者に割り振られる

株主資本コストは、負債のレバレッジによって動くので、企業の資本コストと必ずしも連動しない。

確かに。

「コーポレートガバナンス・コード」が推奨する(ようにみえる)、企業の資本コストをハードルレートに用いる投資判断は危険がいっぱい

ここはよくわかりません。
・負債のレバレッジを高くしてROEを高めるのはハイリスクが伴う
・レバレッジで株主資本のリターンを高めるのは慎重に
負債比率には気を付けましょう、とは思いますが、このことと、(株主資本ではなく)企業の資本コストをハードルレートにすることと、何か関係が?

「伊藤レポート」が指摘する「他国よりもばらつきが少なく、低位集中傾向にあることが特徴」とされる日本企業のROEは、同レポートが主張するような改善を要する課題というより、ファイナンス理論どおり、日本企業はリスクに見合ったリターンを提供していると素直に解釈することもできる

伊藤レポートでは、資本コストを上回るROEを経営の中核目標にすべき、とされました。
ROEが資本コストよりだいぶ低いことを問題にしています。
期待リターン(資本コスト)より、結果((本来資本コストより高いはずの)ROE(株主資本の取得価額に対するリターン))が低い、ということです。

企業の資本コストは、負債コストと株主資本コストの加重平均です。
低金利の日本では、負債コストはかなり低いので、
負債コストの期待リターン<企業の資本コストの期待リターン<株主資本コストの期待リターン
となります。

趣旨としては、
・株主資本のリターンは、
 調達した株主資本の取得価額に対する利益割合(ROE)である
・株主資本コストの期待リターンは企業の資本コストの期待リターンより高い
・少なくともROEは資本コストを上回るべきだ
・調達した株主資本の取得価額x資本コスト(ハードルレート)を上回る利益を
 稼いでください
だと思います。

この場合、資本が長く入れ替わらないとうまく機能しません。
増資や自己株式の取得を機動的に繰り返すことで、”ちょっと前の時価”が”資本の取得価額”になっていることが必要だと思います。”ちょっと前の時価”と”時価”の差額はウィンドフォールということだと思います。

第14章 たかが会計、されど会計

本書のタイトルを冠した14章。イイタイことが詰まっているはず。

・会計はつまらない
 「たかが会計」だからこそ会計は市場経済のバックグラウンドとして決定的役割を果たしうる
・自然と化した人為
 会計という「それについて考えることなしに行える重要な作業」が不可欠

結論としては、

資本市場のインフラとして会計は重要です

いたって普通でした・・・


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