グループガバナンスをいい感じに設計する

企業価値の向上

グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針

組織が大きくなると、硬直的になり、ガバナンスがちょっとずつおかしくなります。このあたり、どうしたらいいのかな?と問題意識をもっていましたが、経済産業省から、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」というものが公表されていました。

グループガバナンスの設計とは、どうやって『人』をまとめていくか、ということですが、これに『実務指針』という会計でおなじみの言葉を組み合わせているのはちょっと面白いですね。

ウチの会社に足りない部分など考え、自分用のメモとしてまとめましたが、何か参考になれば幸いです。

はじめに

最初に、「本ガイドラインは、グループガバナンスに関する一般的なベストプラクティスを示すものである」と宣言しています。内容に自信あり、といった感じですね。あとは5つの「在り方」を示します。すべて「在り方」としてまとめているあたり、「理想を掲げる!」という心意気を感じます。

グループガバナンスのベストプラクティスを示す!

5つの「在り方」!

<span class="fz-20px">火焔土器</span>
火焔土器

その心意気やよし!

グループ設計の在り方

・現状と課題
事業部門が強く、「横串」を通すべきグループ本社の機能発揮が不十分ではないか

(当社の状況)
当てはまります。経理は事業部門に結構遠慮していうべきこともモゴモゴしていますね。

・グループ設計に関する基本的な考え方
多角化やグローバル化が進むと、迅速な意思決定のために権限移譲が進み、組織設計も、
事業部制→カンパニー制→分社化
へと移行する傾向が見られる

組織の大きさではなく、多角化やグローバル化といった”複雑さ”で組織設計は決まってくるらしいです。

(当社の状況)
事業部制ですが、カンパニー制や分社化の必要性を感じることはありません。確かに、多角化やグローバル化は全然進んでいないので納得感があります。

・分権化と集権化のバランス
分権化(事業部門への権限移譲)と集権化(本社によるコントロール)の最適なバランスが検討されるべき
特に事業部門等への分権化を進める場合には、事後的な業績モニタリングや、事業部門等の長に対する人事・報酬決定権限の行使を通じたグループ本社によるコントロールの確保も重要

(当社の状況)
管理部門の横串は弱いと感じますが、分権化が強いと言えるのかわかりません。投資やシステムに関しては、もっと事業部門に権限があっていいと思います。システムは、管理が面倒になるからシステム部門の「あれやるな、これやるな」が強すぎです。

ポイント①
多角化やグローバル化の進み具合で、事業部制・カンパニー制・分社化、何が相応しいか考える

(当社)
現状の事業部制でよさそう。

ポイント②
分権化(事業部門への権限移譲)と集権化(本社によるコントロール)の最適なバランスを考える

(当社)
いくつかの事業を束ねる地域組織の責任者がその地域の人事権を持っていて、大きな投資の決定権は事業部が持っています。最近、投資について地域組織の決定権が強化されました。

本社 ⇔ 事業部門x地域組織
というイメージでしょうか?

事業の意思決定は分権化を進め、同時に、経理・人事などの社内ルールの徹底については本社のコントロール(横串)を強めた方がよいと思います。同じ課題を抱えている会社は多いような気がします。

事業ポートフォリオマネジメントの在り方

資本コストを踏まえた事業ポートフォリオの最適化
・各事業の潜在力を発揮させる「ベストオーナー」が誰かという視点が重要
・CFOが主導的な役割を果たし、客観的な評価指標を用いた一元的な事業評価の仕組みを作る

(当社の状況)
今までの役職のバランスで順繰りに子会社に押し込んでいっているだけで、子会社の課題から「ベストオーナー」は誰だ!と探すような人事はみられません。評価指標は、ROE!ROIC!と唱えてはみるものの、まだ、末端に具体的な目標として落とし込めていません。そしてCFOの姿はまったくみえません。

事業ポートフォリオマネジメントは難しいですね。
声の大きい人たちの従来型の事業に人や予算をすべて吸い取られないように抑えこみ、一方、中期経営計画で大きく掲げている取組みには人も予算も思い切って投入し、事業を戦略的に組み替えていく!ことが必要だと思いますができていません。
強いリーダーが不在の古い大会社ではあるあるではないでしょうか?

内部統制システムの在り方

第2線や第3線のキャリアゴールとして監査役等の地位の向上、幹部候補のキャリアパスとしての内部監査部門

内部統制部門については、いろいろ立派なことが言われていますが、内部統制部門でしっかり不備・不正を指摘してきた社員をちゃんと評価する仕組みがないと、内部統制は機能しません。絵に描いた餅です。

結局、悪事を見つけて止めようとすると、かなり面倒なことになり、下手すると恨まれます。普通の仕事と違って、見逃しても(仕事を放棄しても)、何も面倒なことにはなりません。つまり内部統制部門に悪事を止めるインセンティブは働きません。相手が偉い人、偉くなりそうな人だとむしろ見逃す方にインセンティブが大きく働きます。内部統制についての綺麗ごとはすべて無意味。

監査部の中堅の人が、「こんな日の当たらないところにいて俺はもう終わりだ」と飲みの席で愚痴をこぼしていましたが、こういう風土だと、やる気のない監査部になります。ちゃんと光を当て、大きな不備・不正を見つけたら人事評価も◎にして(人の間違い・不正を発見した人を◎の評価にする、という発想はなかなか古い会社の日本人にはないですね)明るい未来も見えるようにしてあげないと監査の仕事にインセンティブが働きません。偉い人には、綺麗ごとではなく真剣に考えてほしいものです。

「守りのグループガバナンス」の実効性で一番重要なことは、内部統制部門にインセンティブを与えることだと思います。

子会社経営陣の指名・報酬の在り方

・グループとしての社長・CEO等の後継者計画の在り方
 後継者計画として子会社経営陣のポストをタフ・アサインメントとして活用する
・グループとしての経営陣の人材育成
 グループ全体として一定レベル以上のポスト・人材を選定し、評価・選抜を行う仕組みを構築

(当社の状況)
子会社の経営陣は親会社を卒業した人たちがサラリーマンで最後に座るイスとなっています。偉いOBの処遇も考えなければならないので、業績が安定している子会社(何もしなくてもいい会社)は偉いOB用、業績が悪化している、もしくは成長分野の子会社は若手育成用、とわけて、ちゃんと若手育成用の子会社を用意すべきなんでしょうね。

グループ企業におけるインセンティブ報酬

(当社の状況)
頑張っても頑張らなくても、在任期間や報酬額は最初から決まっています。頑張るインセンティブはゼロですね。変えていかないと。

上場子会社に関するガバナンスの在り方

「一般株主との間の利益相反リスク」

「子会社とはいえ、上場しているのだから、ガバナンスはしっかりしてね!」というメッセージが伝わってきます。そのほか、なんとなく、子会社の上場は企業価値の向上のためにはあまりよくない、というニュアンスも伝わってきます。

親会社からすると子会社の上場はデメリットになっている場合が多いと思いますし、個人的に株を買う対象になりません。ソフトバンクみたいに市場をうまく利用できる企業グループだったら子会社の上場はありかもしれません。

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