電子帳簿保存法関連の記事
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電帳法を活用しDXを推進していく時代
電帳法(電子帳簿保存法)がどんどん緩和され、官も民もDXが推進されていく時代です。
DXは結構なんですが、最初にルールの必要性をしっかり考えてもらいたいと思います。小出しに緩和されると、「そのルールやっぱりいらなかったの?」と行政のテキトーぶりに腹が立ちますし、「もうちょっと待つともっと楽に対応できるのかな?」と様子見になってしまい、世の取り組みが進みません。
現在はコロナの影響による世の電子化の流れに押されて、小出し緩和が小刻みに目まぐるしく続きます。
このルールは絶対譲れない!
これを守れば電子化してもいいぞ!
いや~、そのルールいらなくないか?
・・・数年後・・・
緩和してやったぞ!
そのルールやっぱりいらなかったの?
最初からいらないと思っていたんだけど?
・・・数年後・・・
これも緩和してやったぞ!
あれも緩和してやったぞ!
今あるルールも本当はいらないものがあるんじゃないの?
もうちょっと待てばもっと緩和されるんじゃないの?
今やらなくても待った方がいいんじゃないかな。
どうせどんどん緩和されるなら、後でやった方が楽だし🙄
どうしても譲れない部分だけ残して、最初にバッと緩和してもらいたいものです。
2020年10月にデータ保存の要件が緩和されたときの記事はこちらです。
『電子帳簿保存法の改正【2020年10月】でどうなる?』
そもそもの仕組みが紙の領収書に比べて厳格すぎると思います。
この記事の一部を再掲します。
そもそも仕組みが紙の領収書に比べて厳格すぎる【再掲】
しかし、なぜこんなに普及しない仕組みにするのでしょうか?
もともと、紙の領収書は簡単に偽造できます。
文房具屋でコクヨの領収書を買って、適当な会社名のハンコを作って押せば、金額が手書きでも保存義務としては問題ありません(社内的には、交際費の飲食店ならともかく、通常の取引ならもうちょっとかっちりした領収書でないと怪しまれるかもしれませんが)。
税務署は、怪しい取引の怪しい領収書だと思えば反面調査で調べるだけです。
スキャナ保存なら、「写真を撮ったらすぐ紙は捨てていい」でいいのではないでしょうか?
また、スキャナ保存や電子取引に対しタイムスタンプが必要、そんな厳格な取扱いは不要です。
紙の領収書で同じくらい厳格にすると、印鑑登録したハンコで押すこと、そして確認できるように印鑑証明書も添付すること、それくらいのレベルです。
紙の領収書は、取引の現場で負担にならないよう、何も保証のない状態で認めていて、何かあれば税務署は反面調査で確認するメカニズムです。
電子化しても同じレベルでいいはずで、これほど厳格化するのは電子化にやる気がないとしか思えません。
河野大臣がんばれ!
電子取引の印刷保存ができなくなります!【2022年1月】
今回は「電子帳簿保存法の要件が無駄に厳しい」という記事ではありません。
電帳法を適用し効率化をどう進めるか、という課題は別にして、今回の令和3年度税制改正大綱(変更の可能性はあります)で「えっ!」と思ったものがありました。
証憑はすべて紙で保存、選択肢として電帳法を様子見している、というスタンスの経理担当者が多いと思います。自分がそうなので勝手に多いと思っています😄
ですが、今回、『電子取引の証憑を紙に印刷して保存することが認められなくなる』ようです!
電子取引は電子的に保存しなければなりません。どうしたらいいのでしょうか?
令和3年度税制改正の大綱
七 納税環境整備
2 電子帳簿等保存制度の見直し
(国税)
(4)国税関係書類に係るスキャナ保存制度並びに申告所得税、法人税及び消費税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、次のとおり電磁的記録の適正な保存を担保するための措置を講ずる。
②スキャナ保存が行われた国税関係書類の電磁的記録並びに申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、次のとおりとする。
ロ 申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務者が行う当該電磁的記録の出力書面等の保存をもって当該電磁的記録に代えることができる措置は、廃止する。
(注1)上記の改正は令和4年1月1日から施行する・・・
電子取引の保存
電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】を参照してください。
この記事を作成した時点では2020.6の電子帳簿保存法Q&Aを参考にしていました。
2021.7の電子帳簿保存法Q&A(変更箇所下線部あり)はこちらです。
電子取引の保存の要件は次のとおりです。(2021.7の電子帳簿保存法Q&A該当部分)
2021.7変更箇所下線部
電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。)
見読可能装置の備付け等
検索機能の確保
次のいずれかの措置を行う
一 タイムスタンプが付された後の授受
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
電子取引に該当する取引
2021.7変更箇所下線部
(1) 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
(2) インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショット【変更前:画面印刷(いわゆるハードコピー)】を利用
(3) 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
(4) クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
(5) 特定の取引に係るEDIシステムを利用
(6) ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
(7) 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
メールで受取るPDF請求書、ホームページからダウンロードする請求書・領収書は結構あります。
今まで印刷して紙を証憑として保存してきました。これができなくなります😔
さらに、メールで受取るPDF請求書、ホームページからダウンロードする請求書・領収書については、
2021.7変更箇所下線部
(1)及び(2)については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受領したデータに規則第4条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理することが必要です。また、対象となるデータは検索できる状態で保存することが必要ですので、当該データが添付された電子メールについて、当該メールソフト上で閲覧できるだけでは十分とは言えません。
となっており、
タイムスタンプか、事務処理規程が必要です。
また、メールソフトに保存してある、ということでは不十分のようです。
システムが必要になるかどうか
タイムスタンプか事務処理規程のどちらかに対応し、保存用のシステムが必要になります。
*2021.7の電子帳簿保存法Q&A(問12,33下記)によると、保存用の専用システムは必須ではありません。
使用中の会計システムが保存用のシステムになればいいですが、ウチの会社の場合は無理なので別にシステムを導入する必要があります。しかも、今の古い会計システムをベースにした現状の業務フローをそのままに無理に対応すると、手間は増えるでしょう。
同じ状況の会社は結構多いのではないのでしょうか?
この税制改正はダレトク?
保存システムについて
2021.7の電子帳簿保存法Q&Aで、保存システムについて新しく追加されています。
問33 当社には電子取引の取引データを保存するシステムがありませんが、電子取引の取引データを保存する際の検索機能の確保の要件について、どのような方法をとれば要件を満たすこととなりますか。
いずれも、【回答】によれば、専用の保存システムを導入していなくても、社内の共有ドライブ・共有フォルダ等で、
・一覧表の作成(*エクセル等)により検索機能を満たす
・ファイル名・フォルダ名の工夫により検索機能を満たす
くらいの対応(エクセル管理orファイル名管理)でいいらしいです!
問の趣旨は、専用の保存システムは必須ではないことの周知だと思います。
しょうがない。専用の保存システムはなくてもいいです。
だから諦めないで対応してくださいね!
そもそも電子取引とわかるかどうか
仮に、電子取引なのに紙に印刷して経理に提出してきたらどうでしょうか?
郵送で受け取ったものではないとわかるのでしょうか?
メールで受け取ったPDF請求書はわからないかもしれません。
ホームページからダウンロードした請求書・領収書はわかりそうです。
税務調査ではどういった対応になるのでしょうか?
ルールなので会社としては対応すべきです。それは間違いないですが、電子取引を電磁的記録として保存せず印刷保存していたとしても、税務調査の現場ではまったくスルーの可能性もあります。
法人税での請求書の保存義務
法人税法施行規則(帳簿書類の整理保存)第五十九条
青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
法人税法では、相手方から「受け取った」もの、自己が作成して「その写しのある」ものについて保存義務があります。しかし、受領義務や写しの作成義務を課していないので、保存義務があるともいえますし、必須ではないともいえます。また、請求書等の保存は損金要件とはなっていません。
おまけ
誤字じゃないかと気になりました。どうでもいいですが。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(問9)が、例えばスキャナ保存の承認を受けた文書管理ソフトが電子取引の保存要件も満たしている場合には、当該文書管理ソフトを利用して、電子取引により授受されたデータを保存することを可能であると考えられます。
「も、は、が」ならいいですが、「を」は誤字では?
この記事は、電子帳簿保存法一問一答の「2020.6」についてのものです。
「2021.7 問28」では直されています。
改正箇所を下線で示した資料では特に下線はなしで、ちょろっと直しています😉
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(【問 11】参照)が、例えばスキャナ保存の要件を備えた文書管理ソフトが電子取引の保存要件も満たしている場合には、当該文書管理ソフトを利用して、電子取引により授受されたデータを保存することも可能であると考えられます。