非上場株式の評価【法人の取引になぜ相続税の評価方法が?】

経理コラム

法人の取引になぜ相続税・贈与税の評価方法がでてくるの?

経理部門にいると、非上場株式への出資や売却の価格についての相談があります。

企業価値の評価には様々な手法があります。(過去記事へのリンク)
とはいえ、最終的には、価格は交渉で決まり、必要があれば税務上調整することになります。

税務上の評価額に取引価格が制約される必要はなく、必要があれば税務上調整すればいいだけですが、その辺の理解は偉い人でも曖昧な場合が多く、

偉い人
偉い人

税務上の評価額って、なに?

その金額で取引しないとだめなの?

ということで経理の出番となります。
偉い人に説明しなければなりません。

「実務で使うわけではないが、聞かれたときに、ざっくり説明できるようになっておきたい」ということで、大まかな流れをまとめたいと思います。

今回のテーマ

法人の取引に、なぜ相続税・贈与税

の評価方法がでてくるの?

税務上の評価額として根拠とされるのが、相続税・贈与税の評価方法「財産評価基本通達」です。
しかし、なぜ、法人の取引なのに相続税・贈与税の評価方法がでてくるのでしょうか?
知らないと、「法人は取扱いが違うのでは?間違えていないか?」とモヤモヤしてしまうので、その根拠をしっかり確認しておきましょう!

法人税法通達9-1-13 市場有価証券等以外の株式の価額

法人税法通達の有価証券の評価損
9-1-13 市場有価証券等以外の株式の価額

非上場株式の売買価格については特に取扱いはないので、評価換えの通達を参考にします。

市場有価証券等以外の株式につき法第33条第2項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。

(1) 売買実例のあるもの 当該事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額

(2) 公開途上にある株式(金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式)で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下9-1-13において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。)金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額

(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額

(4) (1)から(3)までに該当しないもの 当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額

法人税法通達9-1-14 市場有価証券等以外の株式の価額の特例

9-1-14 市場有価証券等以外の株式の価額の特例

9-1-13では、価額の決め方はかなりざっくりです。
そこで、具体的な方法として、9-1-14で相続税・贈与税の評価方法「財産評価基本通達」を借りることにします。

法人が、市場有価証券等以外の株式(9-1-13の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について法第33条第2項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用する場合において、事業年度終了の時における当該株式の価額につき昭和39年4月25日付直資56・直審(資)17「財産評価基本通達」(以下9-1-14において「財産評価基本通達」という。)の178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件としてこれを認める。

(1) 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合 (同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

(2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。

(3) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

取引相場のない株式の評価(タックスアンサーNo.4638)
取引相場のない株式(出資)の評価明細書と記載方法等

まとめ

非上場株式の売買価格については、具体的には法人税(通達等を含む)の中ではあまり定めておらず、相続税・贈与税の評価方法を利用する、ということが通達で示されている。

ということで、法人であっても、税務上の評価額は相続税・贈与税の評価方法(財産評価基本通達)で決まる。

ただし

・9-1-13で価額が算定できる場合は財産評価基本通達の出番はなし(9-1-14はあくまで特例)
・法人税(=通達)では財産評価基本通達と異なる取扱いを3つ定めている
・法人と個人で税務上の評価額が異なる場合、以上の2点が理由

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